私は以前、子ども向けに絵を見て文章化する練習法をまとめた本を作ったことがあります。そこではポイントとして(1)「全体を見る」→(2)「次に細部を見る」→(3)「(1)と(2)から想像する」というフローを紹介しました。

 まずは「誰(何)が」その行動をしているのかを伝えるのが原則です。仮に散らかった部屋の様子だけをつぶさに話しはじめてしまうと、この絵の「主語(主人公)」がいつまでも伝わらず、聞いている側も何の絵かが最後までイメージできません。

 要は大事なところから優先順位をつけて話し出すということです。聞く側におおまかな映像を描いてもらい、そこに材料を積み重ねていき、立体化してもらうイメージです。そのうえで最後に、絵から読み取れる大きなメッセージをまとめとして持ってくると、ギュッと締まったプレゼンになるはずです。

 これをテレビ番組で私が先生役でやったとき、お題がレストランで2人の女性が座っている絵だったと記憶しているのですが、重要な「主語(主人公)」の説明をすっ飛ばして、いきなりテーブルの上のサラダや食器から説明をはじめた人がいました。

 あるいは「女性」を忘れて「なんか人間がいたよね」という人も。つまり、絵をパッと見たときに、細部に気を取られたり、主役を理解していなかったり、総じて全体を俯瞰して趣旨を把握する作業ができていなかったことになります。

難解な文章を読んで
絵図にするトレーニング

 このように、図を見て言葉や文字にするというトレーニングもあれば、反対に文字を読んでからそれを絵や図版にするという方法もあります。

 私が大学の授業の課題で実施しているのは、複雑で難解な文章を読んでもらい、それを1枚の絵や図にしてもらう練習です。最近ではテキストデータから写真や絵を作り出すAIの画像生成ツールが普及しつつありますが、これを時代に逆行してあえて人の力で行なうのです。