「沈黙は金」などと言われ、時に賢明な選択として扱われがちだが、組織の意思決定の場において「沈黙は無」だ。誰にも気づかれず、誰にも伝わらなければ、その人の知見や感性は存在しないに等しい。
そうならないために、一定の配慮は必要だが、いちいち誰かが聞かなくても、自ら話す組織の方がよほど良い。
「聞かれなくても言う」習慣をどう組織に取り戻すか
最近、企業人の多くは「聞くことの重要性」を学んできたし、この重要性は疑いようもなく高い。だが、同時に「言うことの責任」については十分に教育されてきただろうか。今、重要なのは、「聞かれるまで待つ」のではなく、「聞かれなくても言う」習慣をどう組織に取り戻すかである。
そこで提案が3つある。
提案1)必ず発言、最初に言う人を評価、オンラインツールで発言率可視化
1つ目は、「会議における発言のデフォルト化」だ。発言を前提としたルールを設け、「何かを言うこと」を参加の条件とする。例えば、一人ずつ簡単なコメントを求めるラウンド形式の導入である。発言が苦手な人にも準備の時間が設けられているわけだから、負担を軽減できる。とにかく一人ひとりが当たり前のように発言をする習慣を作らなくてはならない。
提案2)最初に言った人を評価する文化をつくる
2つ目は、「最初に言った人を評価する文化」をつくること。問題の早期発見者や新たなアイデアの提示者に対して、「助かった」「よく気づいた」といった肯定的なフィードバックを明確に表現する。こうした文化が根づけば、「先に言うこと」がリスクではなく、むしろ称賛される行為になる。
多くの組織では、最初に問題提起をした人より、状況をよく読んで(ずる)賢く判断し、皆のコンセンサスを導くような一言を言った人を高く評価しがちだ。そして、最初に問題提起した人を“言い出しっぺ”としてピエロにしてしまう。これでは、「言った者負け」である。いい加減、この状況を変えなくてはならない。
提案3)沈黙を可視化する
3つ目は、「沈黙の可視化」である。オンライン会議ツールでは、会議での発言率を数値で表すことができる。社内チャットなどでも、誰がどのくらい積極的に発信しているかはおそらくワンクリックで、データ化できる。これらを集計して分析すると、組織のどこで情報が滞っているかがわかる。それをもとに、ファシリテーターやマネージャーが介入することで、沈黙が慢性化する前に手を打てるだろう。