手取り45万円、支出38万円で、なぜ貯まらない?
「私も投資をしたほうがいいのでしょうか」と相談に来られたCさん(55歳・会社員の主婦)も、まさにその一人でした。お子さん2人はすでに独立し、現在は契約社員のご主人(59歳)と2人暮らしです。世間で投資が注目されているのを見て、「自分も始めるべきなのでは」と考えるようになったと話します。
とはいえ、現時点でCさんの手元にある貯金は、かき集めて50万円ほど。生活費から何とか余剰金を捻出し、そこから投資に回そうかと考えていたようです。
Cさん夫婦は共働きで、世帯月収は手取りで約45万円。支出は月によって変動するものの、平均で月38万円ほどです。つまり、毎月5万〜7万円程度の黒字があるはずです。普通なら、この状況でお金が着実に貯まっていっても不思議ではありません。しかし、実際にはそれが貯まらない。一体なぜなのでしょうか。
詳しく話を聞くと、Cさんには「お金がまとまってくるとすぐに返済に回す」という特徴的な傾向があることがわかりました。貯金が70万円、100万円と貯まってくると、以前購入した商品などのローン残債を一括で返済してしまうのです。その結果、また大きな支出が必要になったときには、新たにローンを組むという悪循環に陥っていました。これを繰り返しているうちに、「貯まらない家計」が出来上がっていたのです。
「借金や残債があるのが気になって仕方ない」と話すCさん。確かに、その気持ちはよくわかります。しかし、必要なものを計画的に購入するのではなく、「借金が残っているから早く返す」ことを最優先にしていては、貯蓄はいつまでたっても安定しません。根本的な家計管理の方法を見直さない限り、この状況は続いてしまいます。
10年前の出来事が招いた「借金恐怖症」
こうした行動パターンが形成された背景には、10年ほど前の深刻な出来事が影響していました。
当時、ご主人は会社の管理職として、それなりに高収入を得ていました。自動車やパソコン、時計などの高額商品を購入したり、飲み代に使ったりと、支出も派手だったといいます。そうした費用は、ご主人が自分の給料の中でまかなっていたつもりだったそうです。
夫婦は結婚当初から共働きで、家計は「完全な別財布制」でした。共有の生活費だけを出し合い、あとは各自が自由に使うというスタイル。お互いに、「相手もきっと貯金しているだろう」と思い込んでいたのです。しかし、この思い込みが後に大きな問題を引き起こすことになります。