厳しい老後の現実と変わらない習慣

 ご主人には退職金がなく、Cさんの退職金も300万円程度とのことです。ご夫婦は「再雇用で働き続ければ何とかなる」と楽観的に話していましたが、現実はそう甘くありません。再雇用後の収入は大幅に減少するのが一般的で、年金だけでは生活費を賄うのは困難です。

 現在、Cさんは黒字額を増やすために私のもとへ継続的に通ってきてくださっています。しかし、なかなか長年の習慣は変えられず、「貯まると返済」「高額な買い物は分割払い」という行動パターンが根強く残っています。私も面談のたびにあの手この手で改善策を提案するのですが、「続かない」「変えられない」という状況が続いているのが現状です。

 一度でも「ローンを組まずに大きな買い物ができた」という成功体験があれば、考え方が劇的に変わるかもしれません。しかし、それがなかなか実現できないのが実情です。過去の経験による心理的な制約が、合理的な行動を妨げているのです。

投資で成果を出すには、ある程度資金に余裕が必要

 このような状況下で、「投資を始めるべきか」と問われても、私としてはおすすめできません。“お金がない人が投資してはいけない”とはいいませんが、「安定的で効果的な投資」を行うには、やはり資金の余裕が必要です。

 過去の経験にとらわれすぎず、柔軟にスタンスを見直すことも重要です。たとえば、「まとまったお金ができても、すぐに返済に回さない」「計画的な支出のために貯金を維持する」といった変化が求められます。何より優先すべきは、家計そのものを強固にすることです。投資に取りかかるのは、その土台が整ってからで十分なのです。