そんなある日、ご主人から突然、「自動車ローンやクレジットカード、キャッシングの返済が重なって困っている。助けてほしい」と打ち明けられました。総額で800万円もの借金があることが判明し、Cさんは大きな衝撃を受けたといいます。

 Cさんは、実家に頼んだり自分の貯金を取り崩したりして返済を手助けしましたが、それでも追いつかず、最終的にご主人は個人再生手続きという債務整理を行うことになりました。いわゆる「ブラックリスト入り」の状態です。

 幸いにも、Cさんはご主人のローンに保証人として関わっていなかったため、信用情報への直接的な影響はありませんでした。しかし、ローンで購入したご主人名義の車が引き上げられたり、子どもの大学費用が十分に出せずに負担をかけたり、50代に入る前に持ち家を購入するという夢も断念せざるを得なくなりました。

借金が怖くて「隠れ貧乏」状態から抜け出せない

 この出来事以降、Cさんの家計管理には「とにかく借金を避けたい」「支払い残高があると怖い」という思いが根強く残っています。その結果、分割払いやローンで何かを購入しても、貯金が貯まるとすぐに繰り上げ返済に回してしまう。そして、まとまったお金がなくなったときにまた分割で購入する……というサイクルに陥っているのです。

 このため、「分割払いの支払いがない時期」が非常に短く、また貯金も一時的に貯まっては消えるという状況を繰り返しています。これでは、まとまった資金を形成するのは極めて困難で、当然ながら投資に回す余力など出てきません。

 見た目には共働きで、黒字家計を維持しているように見えます。けれど実情は、まさに「隠れ貧乏」と言える状況です。どこかで「大きな買い物は我慢する」「貯金は返済のためではない。計画的な支出のために貯金をする」といった発想の転換が必要不可欠です。

 とはいえ、そうした提案をしてもCさんは「でも、必要なものは必要だし、残債があるのは怖いし……」と、思考が堂々巡りになってしまいます。過去のトラウマが強すぎて、合理的な判断ができない状態になっているのです。このままでは老後資金の準備もままなりません。