しかし、職業に貴賤なしとは言うものの、昭和の時代は下層の仕事のように見られていたと思っている。
長男が子どもだった頃、学校から泣きながら帰ってくることがよくあった。理由を聞いてみると「ゴミ屋はくさい」と同級生たちにはやしたてられ、いじめられたと言う。ゴミの収集車は毎日、徹底的に掃除をするので、実際にはにおいなどまったくしない。それでも「ゴミ屋はくさい、汚い」という偏見がある。これはなかなかやっかいで、そのイメージを業界全体で変えていく必要があると考えた。
自分を肯定できない社員たちを
どう育てていけばよいのか
夫と2人で始めた大和清掃だが、社員を採用するようになると、採用活動から社員教育は主に私が担当することになった。
日本が経済的に発展し、ホワイトカラーの仕事が主流になっていく中で、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の代表のようなゴミ屋の仕事に喜んで入って来る人はいない。
だから、この業界で働きたいと言う人は大歓迎だ。頭を使う仕事より体を使う仕事を選んで入社した人がほとんどだが、体力だけに頼っていては情けない。長い人生、読解力と人間力も大事。その思いから人材育成に本腰を入れて取り組み始めた。
入社した社員は、表立って口には出さなくても、心の中では「オレもとうとうゴミ屋か」という自虐的な気持ちを持っているのだ。
ある社員は息子さんに「パパはゴミ屋だからくさい」とバカにされたと言う。そんな状態だから、入社してくる社員たちはどこかやけくそになっていて、わざと汚い格好をしたり、首に真っ黒になったタオルを掛けて仕事場を闊歩したりする。
今でいう自己肯定感が圧倒的に低いのだ。自分の仕事、生き方を肯定できず、家族や周囲からも白い目を向けられる。その行き場のないモヤモヤをどう発散したらいいのかわからないのだろう。
この社員たちをどう教育し、一人前に育てていけばいいのか。