私と社員たちの長きにわたる闘いが始まった。「この会社に入社してよかった」と心から思えるような社員に育てあげなければと、私は心に誓った。
「あなたも幸せになりましょうよ」
→「は?考えたことない」と答える
名晃発足当時、今から40年くらい前である。うちの社員たち、全員が幸せな家庭に生まれたかどうかはわからない。どこかでずれてしまって、何かというと「オレなんか」と自分を卑下している。
入社してきた際にあまりに反発ばかりするので「あなたも幸せになりましょうよ」と言うのだが、「オレには関係ない」「ほっといてくれ」と聞く耳を持たない。「そんなことを言っているあいだに年を取ってしまうよ」と言うと、「は?考えたことない」と答える。
そこで考えたのが、「自分で生きる力」をつけさせなければいけないということだった。彼らは耐える、こらえるということを知らず、少しでもイヤなことがあればすぐに人やモノにあたったり、辞めていく。辞めて他社に転職しても、またイヤなことがあれば辞めて次に行く、そのくり返し。
辞めていった人の噂を聞いたら、どんどんおかしな方向にいっている。せっかく縁あってうちに来た人が、それではいけない。いくら世間からゴミ屋と言われようとも、うちでその悪循環を止めて、その人に幸せな人生を送らせないといけない。人は裸で生まれてきて裸で死ぬ。それはお金持ちもそうでない人もみんな同じなのだ。
入社してきた人たちは「辞めさせたらダメ」と思う一方で、私はどうしても社員に「勉強しなさい、勉強」と言い続ける。そうしないと、私が真っ当なことを言ってもすぐに曲解したり悪いほうに取って、社長(夫・清文さん)に「専務にこんなことを言われました」と告げ口をするからだ。
私は彼らのためになることしか言っていないつもりなのだが、彼らはすぐに悪いほうに受け取ってしまう。まずはそこから直していかなければならなかった。