収集するゴミを蹴飛ばして
足をケガする社員が後を絶たない

 名晃に入ってきた社員には「オレもとうとうゴミ屋か」と吐き捨てる人がいる。もちろん、口に出さない人もいるが、心の中ではそう思っているのだ。「自分も落ちたものだ」と。自己肯定感の反対で、自己否定感を持ってしまっている。

 だから、仕事に対してもどこか投げやりで乱暴。ゴミを扱うときも足で蹴る始末。箕というゴミをすくう道具があるのだが、ゴミを寄せて、箕に向かって足で蹴って入れて、箕に集めたゴミを車に積み込むという荒い作業をする。

 やわらかいゴミならまだしも、企業が出すゴミだから、当然、硬いものもある。それを乱暴に足で蹴るものだから、むこうずねはケガだらけ。でも、自分のケガをケガとも思っておらず「まあ、ケガしてもしかたないなあ」くらいにしか感じていない。自分を大事にしないのだ。

 私が現場を見にいくと、足を引きずっている社員がいるので「どうしたの?」と聞くと、「何でもないっす」と答える。足を引きずっているのに何でもないことはないと思って、ズボンの裾をめくって見たら、傷口が悪化して膿んでいる。

 本人は強がって、それでも平気だと言い張る。私が「すぐに病院に行きなさい!」と言うと、「こんなことで病院に行ったら男がすたる」と虚勢を張る。それを聞いて私は「社長命令。病院に行きなさい!」と強い口調で怒鳴った。

「社長命令」などという言葉を使ったのは、このときが初めて。以後、今まで使ったことはない。その社員は病院に行き手当てしたが、それでも同じようにケガする子もいたし、収集車の交通事故もたびたび起こった。

 私からすれば「うちに来てケガして人生をダメにしたら、申し訳ない」と心配するわけだが、彼らはケガをケガとも思わない。「ゴミの仕事をしていたら、ケガなんかしかたないわ」と強がるだけ。自分の将来、未来のことは考えていない。

消極的・否定的に生きる中で
社員に染みついた負け犬根性

 会社の規模拡大とともに人を採用していると、ほんとうにいろいろな人が来るなと思う。