法政大学キャリアデザイン学部が目指すもの
日本で大学におけるキャリア教育が広がっていったのと時期を同じくして、法政大学は2003年にキャリアデザイン学部を発足させている。児美川教授はその設立メンバーであり、学生を指導しながら、学部の運営にも深く携わってきた。
児美川 キャリアデザイン学部は、個人がキャリアを主体的に考え、設計していく必要性の高まりを背景に、キャリアコンサルタントなど、人々のキャリアデザインを支援する専門人材の育成を目指して発足しました。昔のような、日本型雇用の組織主導で個人のキャリアが築かれていく状況ではなく、誰もがキャリアチェンジを経験するのが当たり前になりつつありましたから、それを支援する人材が必要だ、という考えから出発しています。でも、当時(2003年頃)は、まだキャリアコンサルタントの資格を持つ人も少なかったですし、「キャリアデザイン」という言葉も浸透していなかったので、設立の前年に全国の高校や予備校に説明をして回ったときには、かなり苦戦しました。ただし、おもしろかったのは、先生方はさておき、生徒たちには話がすんなり通じたこと。彼・彼女たちのほうが時代のニーズを敏感に察していたのでしょうね。
設立当初は「得体の知れない新設学部にチャレンジ精神を持って飛び込む、尖った学生が多かった」と振り返る児美川教授。ただ、設立から20年以上経ったいまは、それが多少変わってきているようだ。
児美川 設立時は目新しかった学部も、10年もすると、良くも悪くも「普通の学部」になるので、いまはいろいろな学生が集まってきています。将来の希望についても、キャリア支援の仕事に就きたいという学生と、具体的なことはこれから考えるという学生が半々という印象です。卒業後は、他の文系学部と同様、民間企業の社員や公務員、教職員など、幅広い業種・職種に就職しています。世の中の現実として、キャリアコンサルタントなどの専門職は実務経験のない新入社員がなるものではないので、大学での学びと就職先が直結するケースはあまりありません。ただ、社会人になって数年経った卒業生のなかには、人事部に配属されて、キャリア支援に携わるようになった人たちもいます。
また、学部設立の2年後に大学院を立ち上げて、社会人が学びやすい平日夜間と土曜日に開講しているのですが、こちらには企業の人事部の方や、高校や大学の教職員といった方たちが実践的な学びを求めて来ています。現在の職場でキャリア支援に関わっているわけではないけれど、自分の将来設計を見据えて学びに来る方も目立ちますね。