
チーフプロデューサー談
「オーディションが人間と人間の対話みたいな時間になった」
大好きだった『アンパンマン』を題材にしたドラマ、それも重要な役で出演が決まったとき「本当に嬉しかった」と微笑む。
「僕が『アンパンマン』を好きだったことも知っている親が一番喜んでくれました」
そのうえ国民的番組の“朝ドラ”である。
「たぶん全役者がそうだと思いますが、朝ドラは、役者をやっていたら一度は出演してみたい、夢の舞台のひとつだと思います。祖父母も喜んでくれて、放送を毎日2回は見ていると言ってくれています」
自身も朝ドラを見てから学校に出る日々を過ごしていた。とくに『ゲゲゲの女房』(10年度前期)が印象に残っている。
「朝見て、気持ちよく登校や出勤できるパワーがあるドラマだと、視聴して実感していたので、僕が演じるうえでもそれは意識しました」
オーディションを受けて千尋役を射止めた。
「オーディションを受けたあと、マネージャーさんから電話をもらって、決まったと聞いた時は本当にとても嬉しかったです。ただ、最初は実感があまりわかなくて、日を追うごとに、たとえば衣装合わせをはじめとして、『あんぱん』関連のことに触れるたび、実感が湧いてきました」
千尋は嵩より体格がしっかりしている設定。クランクインの2カ月ほど前からトレーニングして撮影に臨んだ。筋肉を増量して8キロくらい体重を増やした。
オーディションでは、ユニークな課題があった。『アンパンマンのマーチ』の歌詞を、喜怒哀楽の感情を込めながら朗読するというものだ。「どうやればいいのか本当にわからず、何も考えずにその場で感じたようにやりました(笑)」と振り返る中沢に対して、制作統括の倉崎憲チーフプロデューサーはそのとき受けた印象をこのように語った。
「喜び、怒り、悲しみの順に表現してもらったとき、中沢の目の奥から感情がとても伝わってきました。
オーディションでは誰もが自分をよく見せようとするものですが、中沢は自分の弱みも包み隠さず、全部さらけ出してくれているかのようでした。オーディションという場にもかかわらず、人間と人間の対話みたいな時間になって、この人だったら千尋はいけるという手応えを感じました」