「結婚十訓」で包囲されるヒロイン→戦時下の“二十歳の風圧”に震える【あんぱん第36回レビュー】『あんぱん』第36回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第36回(2025年5月19日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

先週末に教師になって
今週いきなり「1年半後」

 第8週「めぐりあい、わかれゆく」(演出:柳川強)はのぶ(今田美桜)が母校・御免与尋常小学校の教師になってから1年半が過ぎた。

 先週末、はつらつと先生になったところで終わったと思ったら、いきなり1年半後に飛ぶとは大胆である。

 新人教師として失敗したり成功したりしながら成長していくところが見たかったと思う視聴者もいるだろう。この新人期をすっ飛ばすのは、前作『おむすび』もそうだった。主人公・結(橋本環奈)が管理栄養士として病院勤務になると一気に4年たって、それなりに経験を積んで頼もしくなっているところから病院編がはじまったのだ。

 このときも、病院での未経験ゆえのあれこれを見たいと思った視聴者の声がSNSで散見された。また4年分の経験があるにもかかわらず、いまさらそういうところでつまづく?というようなエピソードもあり、4年間を描かなかったことのリアリティに疑問を感じる部分もあった。

 もっともそういう時間の流れの止まった『サザエさん』的なものと考えれば、これはこれでありだった。

 では、『あんぱん』はどうか。