
任せるよりも、自分でやったほうが早い、自分でやればミスもないし安心、そもそも任せられる人がいない…そう思って一人で仕事を抱え込んでいるリーダーは多くいます。私はそういう状態を「自分で何でもやってしまう病」にかかっていると呼んでいます。任せることは、職場のリーダー、経営者の重要な仕事だと、頭では分かっているけれど、現場では任せることに不安を抱き、なかなか実行できないのが実情です。それでは、人は育ちませんし、リーダーが本来やるべきことができず、結果的に成果を上げにくくなります。(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)
「何でも自分でやってしまう病」に
かかっているリーダーの特徴
私自身も、かつてセブンイレブンのFC店を経営していたとき、スタッフに任せることができず、毎日一人で忙しく動き回り、疲弊していたという経験があります。まさに、私が言うところの『何でも自分でやってしまう病』に掛かっていたのです。
当時、チェーン本部からは、店の仕事の9割をスタッフに任せていくことが推奨されていました。とくに、商品発注については、「お弁当」「おにぎり」「総菜」など、取扱商品をカテゴリーごとに細かく分けて、担当者を決めて分担して発注することが原則でした。しかし、アルバイトスタッフに発注を任せた商品が売れ残り、目の前で大量に廃棄されていくのを見ると、「これは任せてなんかいられない!」と思ってしまい、スタッフが発注した数量が、私の考えている数と異なっていれば、勝手に変更していました。
そうしたことが続くと、自分が発注した数と入荷してくる商品の点数が異なるので、スタッフは疑念を抱きます。さらにしばらくすると、スタッフは発注業務に真剣に取り組まなくなってしまい、それまで以上に、売れ筋商品の欠品や死筋(売れない商品)が大量に残り、廃棄の山となったりして、見る見るうちに業績が下がってしまいました。
何でも自分でやってしまうリーダーは、かつての私のように、「あなたに任せた」と言いながら、自分のやり方と違うやり方で業務を進めることに違和感を抱き、つい口や手を出してしまいます。その結果、スタッフのモチベーションは下がってしまうのです。