その上で、ご即位20年を迎えた陛下に対して、

「象徴とはどういうふうにあるのが望ましいかということをずっと考えてこられた20年だったのではないかと思います」

 と、答えたことがある。

 そしてある日、宮さまは私に、

「両親と一緒に暮らすことで、親の姿を見て自然に自分の立ち位置を学ぶことができ、とてもよかったと思います」

 と、しみじみと振り返ったことがあった。きっと悠仁さまもご両親の仕事に打ち込む姿などから、自然に多くのことを学ぶに違いない。ご家族と一緒に暮らすことが、何よりも悠仁さまにとっての大切な「帝王教育」なのかもしれない。

上皇さまの退位メッセージは
悠仁さまが小4の夏のこと

 悠仁さまが附属小学校4年、9歳の夏のことだった。2016年8月8日、上皇さま(当時は天皇陛下)は、「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのようなあり方が望ましいか」についての考えを、国民に向けたビデオメッセージという形で発表した。いわゆる「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」である。

 当時、82歳の上皇さまは、数年前から高齢による体力面のさまざまな制約を覚え、

「次第に進む身体の衰えを考慮するとき、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」

 そう語り、終身天皇を前提とする制度の問題点にふれ、生前退位の意向を示唆した。

 当時の安倍晋三首相は、上皇さまのおことばを、「重く受け止める」と述べ、政府は法律整備に向け議論を進めることとなった。天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的にふれることは控えるとした上で、上皇さまはビデオメッセージで約10分間にわたり個人的な考えを述べた。

 翌8月9日の読売新聞は、朝刊の社説で「生前退位の意思を抱いておられる陛下が、ビデオメッセージという異例の形で自身の考えを語られた」「天皇陛下の思いを真摯に受け止め、象徴天皇の在り方を幅広く議論する契機としたい」などと、好意的に書いている。