もちろんそれも欠くべかざることではあるのだが、昨今ではそこが強調されたがゆえに、日常の仕事において、そもそもの目的であった株主の利益の追求を意識することは少ないのではないだろうか。
最近は情報流通も活発化したので、“会社は社長のもの”と誤解している人は少ないと思うが、念のため補足すると、会社は株主のものであり、社長は株主に選出された役職者に過ぎない。
だから、会社は社長のものではない。オーナー社長は、たまたま株主と社長が一致しているに過ぎない一例で、この場合のみ、会社は社長のものだと言える。上場、すなわち株式公開は、自社株を株式市場に公開し、一般投資家に広く投資の対象としてもらうことを指すから、上場企業においてはオーナー社長ということは基本的にありえないし、そうでなければそもそもなぜ公開したのかわからない、ということになる。
資本主義のルール下では、会社の目的に沿っている人は、より多くの金銭的リターンを得る。あなたがある会社で働いている場合には、会社に利益をもたらせているか、という質問がそれにあたる。
逆に言えば、あなたがどれだけ美しい資料を作成しても、それが売上につながらなければ価値はゼロである。というか、あなたのために給料や社会保険料、座席のオフィス家賃を払っている分、会社としてはマイナスである。
経営者目線はいらないが
判断基準は知っておくべき
とはいえ、直接売上につながる営業に関わる部署以外は、売上貢献への実感を持つのは難しいかもしれない。
コストセンターと呼ばれるバックオフィスはなおさらである。エンジニアの場合も、プロダクトを複数人で改善したとして、それがユーザーの増加や解約率の低下にどれだけ寄与したか、測るのは難しいだろう。
ただ、あなたがどの立場にあっても、社内外のサプライチェーンを理解し、会社やステークホルダーに利益をもたらす方向に行動することは重要であり、それを提言・行動して成果を出す努力は怠らない方がよい。
なぜなら、それが資本主義のルールだからである。

なお、株主利益の追求をはじめとする企業の目的を、あなた自身の目的と一致させる必要はない。ここでは、企業の目的を理解し、それに協力すれば企業からの報酬も大きくなる、と言っているに過ぎない。
よく巷で、「経営者目線を持て」という言説に対して「従業員の給料で経営者のように振る舞えなどとはけしからん」と怒っている人を見かけるが、ここに誤解があるように思う。
あなたは企業、すなわち経営者の目的や制約条件を理解したうえで、従業員の立場で利益を最大化すればいい。
これは経営者と同じ判断軸で行動することとは明らかに異なる。あなたはあなたの判断軸で行動すればよいのだが、経営者の判断基準を知らなければ双方の利益を最大化することはできないし、裏を返せば判断基準を知ることで、従業員たるあなた自身も得する機会を得られるだろう、ということである。