成長できなかったPayPay銀行と比較すれば、KDDI傘下のauじぶん銀行は預金量を約4兆円まで成長させたという点で、まずまずの成果が出せたといえるかもしれません。ただ口座数は670万と数が少ない。いずれにしてKDDIもソフトバンクも携帯の契約数と比べて傘下の銀行の規模は期待以下のレベルにとどまっていたわけです。

 これに対してドコモと住信SBIネット銀行のペアは、これまでの携帯3社のペアマッチと比較して最高のペアと言えます。預金量はおよそ10兆円ですから、巨大携帯会社と巨大ネット銀行が初めてペアになったと言えるのです。

【視点2】
携帯会社とネット銀行が一緒になることで何が狙えるの?

 では、携帯会社とネット銀行が一緒になることで何が狙えるのでしょうか?

 ひとことで解説すると、銀行ビジネスにおける「リテールビジネス」と言われている領域で、メガバンクよりも成長が期待できるのです。

 銀行業では伝統的に、ホールセールと呼ばれる法人ビジネスとリテールと呼ばれる個人相手の銀行ビジネスを、従来型の銀行がどちらにも力を入れておこなうのが伝統的なビジネスモデルでした。

 ところが収益や成長という観点で見ると、明らかに結果が出せるのが大企業を取引相手とするホールセールでした。大手銀行では昭和の後半あたりからは花形の職場はホールセールに強い都心の支店で、個人相手のリテールビジネスが多い郊外の支店は二番手以下の位置づけとなってしまいました。

 経営視点で見れば、ホールセールに力をいれたほうがいいということは明白で、年々、大銀行の中でのリテールビジネスの優先順位が下がっていきます。

 しかし、本当のところはどうかというと、店舗で人手をかけて対応するからリテールビジネスの収益性が低いのです。

 ネット銀行のように最初から店舗を持たない銀行なら、むしろリテールは収益があがります。しかも、DXに投資をすればネット銀行は顧客から見た利便性を上げ、銀行ビジネスに対してもイノベーションを起こすことができます。そのイノベーションの最たる切り口がスマホアプリでの銀行サービスの提供です。