この文脈上で考えると、大手スマホ会社が本気でネット銀行のリテールビジネスに投資をすれば、これまでメガバンクが提供できなかったような新しいサービスを誕生させることができます。これこそドコモが住信SBIネット銀行を子会社化した「第一の狙い」であることは間違いありません。

 たとえば、メガバンクは新NISAに合わせて個人向けの投資信託商品を提供していますが、コスト上の制約から手数料をたくさんとらなければならず、そのような商品しか推奨できません。これがネット銀行なら、もっとユーザーニーズにマッチした金融商品を勧めることができるようになります。住宅ローンについても同様です。

 さらに、今回親会社同士でもNTTがSBIに1100億円を出資することが発表されています。スマホとネット銀行に閉じるのではなく、通信と証券のようにより広い視野での連携も生まれそうです。このように個人向けのリテール市場が当面のドコモにとっての主戦場になるでしょう。

【視点3】
もっと先の戦略としてドコモが見据えているものは?

 さて、さきほど申し上げたように「通信と金融の融合」のように一段高い視座でも今回の資本提携にはポテンシャルが存在するのですが、それは少し話が大きすぎて、現実化するためにはまだ時間がかかるかもしれません。

 一方でもう一度、スマホとネット銀行のレベルに話を戻してみた場合に、実はもうひとつ、既存の銀行業界ではこれまでまだ実現できていない巨大なビジネスチャンスが存在しています。それがスモールビジネス向け金融とスマホの融合、ドコモの「第二の狙い」です。

 実は銀行業について、もう40年以上昔にコンサルティング業界内である未来予測をしていました。それはホールセールとリテールの収益性がともに下がり、銀行業にとっての重要な市場はスモールビジネスへと変化するのではないかという予測です。

 これは巨大企業が社債を発行するようになった時代に予測された未来です。社債というのは大企業が銀行からお金を借り入れるのではなく、直接資本市場から資金を調達する方法です。大企業にとってのメリットは資金の調達コストが下がることです。