これらの詐欺は、匿名性と拡散力が高いSNSの特性を最大限悪用したもので、加害者に対する追跡を困難にしている。また、個人情報を詐取する目的で、不審なリンクを送りつけるフィッシング詐欺に、実在の人物を騙った闇アカウントが使われることもある。

 こういった詐欺の手口においては、個人情報を巧みに騙し取られることも多いため、最初の被害が発生した後に、さらに二次的な被害に繋がるリスクもある。

乗っ取り・なりすましがSNSで横行
犯罪者には使い勝手の良いツール

 大手のSNSプラットフォーム事業者は、こうした違法行為を未然に防ぐために、利用規約の強化や、AIによる不正検出システムの導入などを進めているが、犯罪者グループの手口のほうが圧倒的に巧妙であり、現状のSNSは闇アカウントの無法地帯と化している。

 この状況は、日本に限ったことではない。詐欺などのサイバー犯罪だけでなく、国や企業を狙った大規模なサイバー攻撃、相手国の社会的分断を狙ったディスインフォメーション(偽情報)の展開、そしてウクライナなどで起こっている実際の戦争においても、闇アカウントは悪用されている。

 皮肉なことに、世界中の悪意ある者にとって、最も使い勝手の良いツールの1つがSNSになっているのだ。

 これらの闇アカウントを巧妙化している要因の1つは、ダークウェブなどのサイバー闇市場で売買されている、実際に存在している人物のSNSアカウントを乗っ取ったものが使われている場合も多々あることだ。

 サイバー闇市場においては、プラットフォーム事業者に対するサイバー攻撃や、フィッシング詐欺などによって窃取されたSNSアカウントのログイン情報(ID・パスワード)が頻繁に売買されている。

 闇アカウントを使ったサイバー犯罪を行う者たちは、こういった乗っ取られた本物のSNSアカウントを使うことで、自らの悪意を巧みに隠しながら、ターゲットに警戒心を抱かれることのないように近づこうとしているのだ。

 そして、日本においては、闇アカウント問題の中心にトクリュウの存在がある。トクリュウが首謀する、特殊詐欺や強盗において実行役の募集に闇アカウントが使われているのは、これまで見てきた通りである。