トー横キッズ問題においても、トクリュウが運用しているとみられる闇アカウントが、「宿泊場所を提供する」「生活費を支援する」といった、一見すると親身な助けを装う投稿を行い、未成年者を犯罪に巻き込む入口としている事例も報告されている。
それ以外にも、闇アカウントを使ったサイバー犯罪の形態は多岐にわたる。本章では、そんな闇アカウントの実態についてみていきたい。
美男・美女のアイコンにご用心!
恋愛感情につけ込む「ロマンス詐欺」
ロマンス詐欺は、SNSやメッセージアプリを通して相手の感情を操り、金銭的な搾取を目的とする犯罪で、日本に限らず世界中で深刻な被害を生んでいる。
特徴的な手口は、SNSの偽装されたプロフィール(闇アカウント)を用いて、フレンドリクエストやフォロー申請を通じてターゲットに接触することから始まる。繋がりが生じたら、恋愛感情を装いながら、ターゲットの心を巧妙に引き込むやり方だ。
ロマンス詐欺は、被害者の恋愛感情や信頼を得ることで、経済的な援助を引き出すことに目的がある。ロマンス詐欺の多くは、国際的な犯罪者グループが関与していることが知られており、特にナイジェリアを拠点とする「ナイジェリア詐欺」と呼ばれるグループが有名である。
犯罪者グループは、魅力的な外見や成功したキャリアを持つ人物を装い、フェイスブックやインスタグラム、Xなどで、何気なくターゲットに接触してくる。初めは何気ないやり取りを続け、徐々に親密な関係を築き上げることを狙うわけだ。
やがて、一定の信頼関係が芽生えた頃に、メッセージに「緊急の医療費が必要」「ビザの手続きで資金が必要」など、金銭的な援助を必要としている状況を匂わせてくる巧妙なのは、感情に訴える言葉だけでなく、話の信憑性を高めるための偽造文書や写真なども用い、被害者の心に揺さぶりをかけてくることだ。
この時点において、もし被害者に何らかの感情が芽生えていると、相手が困っているという強い思い込みや、関係を壊したくないという心理から、多額の送金に応じてしまうケースが出てくるのだ。
ロマンス詐欺の手法には、男女の出会いを装った手口以外にも様々なバリエーションが存在する。たとえば、「王族の縁者」や「国際的なビジネスパーソン」を装う投稿ややり取りを繰り返しながら、ターゲットの信用を得ようとするものなどだ。
共通するのは、巧妙に作られたシナリオによってターゲットを欺き、最終的には感情的にも経済的にも大きな被害を与えることだ。