
説明セリフに体温を残す
島役・横田栄司のさすがな芝居
目黒は甲幹部候補生、嵩は乙幹部候補生。
ここまでの流れを島(横田栄司)が語るのだが、説明セリフを見事に緩急交えて語り、島というキャラが感じられる体温のある芝居で見せる横田栄司。さすがである。空間に自分の足跡をしっかり残している。
それにしてもあの神野が温情? 意外なこともあるものだと思ったら、彼はやや不服そうに、誰かに頼まれたのだと明かす。このとき、注目すべきは嵩がだいぶ、洗濯物のたたみ方がうまくなっていることである。
試験に関しては「変わり者」に頼まれたと聞いた嵩は八木だとピンとくる。
さっそく感謝を述べにいくが、「さあ知らんな」と相変わらずとぼける八木。
彼自身はなぜ幹部候補生試験を受けないのかと嵩が訪ねると、「俺はこんなところでえらくなるより1日も早くしゃばに戻りたい。だからささやかに抵抗している」と答える。
士官候補生、さらに士官になったら、戦争と密接に関わり続けることになるということなのだ。
嵩も八木の言葉にはっとなり、もしかして早く前線に送り出したいのかもと疑いを抱く。
「よく考えたらどんどん戦争から逃げられなくなってる」と嵩は気づいた。八木は一枚も二枚もウワテである。戦争と関わらないようにしているのは屋村(阿部サダヲ)に近いといえるかもしれない。
厩舎で嵩合格の報を聞いた健太郎(高橋文哉)は「俺達に逃げ場なんかなか」とすっかり諦め気分。出陣の命令が下ったら大和魂で戦うしかないと覚悟をしていた。
そこへ、馬場力(板橋駿谷)と甲田鉄(萩原亮介)が祝いに酒を飲もうと顔を出す。
あんなに厳しかったふたりがすっかり変わって、素朴な笑顔を見せるのには、視聴者は呆気にとられたことであろう。
馬場は、うさばらしに殴るのはもうやめると宣言。
もしかして、これも「正義は逆転する」の一例なのだろうか。人間はすぐに考えを変えるという。
嵩は「ワッサン」を歌って場を盛り上げる。この歌をすぐに楽しめるのはみんな相当酔っているに違いない。
馬場たちは若干自棄になっているのかもしれない。もはや暴力でもその気持ちは解消できなくなっているのかも。