――デジタル化が進んだ企業と遅れている企業との間では、業績にどんな差が出ているのでしょうか。
デジタル化の進展と、労働生産性や売上高の変化は相関している、という調査があります。東京商工リサーチの調査を基にした分析では、15~21年の比較において、段階1と段階2の企業では生産性と売上高が平均でマイナスに推移しているのに対して、段階3と段階4の企業ではプラスに推移しています(図2参照)。
特に段階4の企業平均では労働生産性が82万4000円向上し、企業の売上高は13.8%増加しています。デジタル化は経営の高度化に向けた大きなチャンスであり、実際に業績にも効果が表れていることが分かります。
デジタル化の成功には経営者の関与が重要
――デジタル化を進める上で重要なポイントは何ですか。
「経営者の関与」が非常に重要です。経営者の関与が積極的であるほど、デジタル化が業績の改善につながる割合が高くなる傾向にあることを、『2021年版 中小企業白書』で示しています。具体的には、デジタル化を推進した企業に「どの程度プラスの影響があったか」という質問に対して、「システム部門や現場の責任者などに一任し、経営者は関与していない」企業では約40%が「プラスに影響した」と回答していますが、「経営者が積極的に関与した」企業では75%の企業が「プラスに影響した」と回答しています。
――いわゆるアナログ企業は、どのようなプロセスを踏んでDXを目指していけばいいのですか。
中小企業庁では、企業がデジタル化を段階的かつ効果的に進められるよう、さまざまな支援策を整備しています(図3参照)。企業がDXを進めるには次のようなプロセスを踏むと考えています。
まずは、自社にデジタル化の必要性があることを認識する「気づき」。次に、どの業務にどのような課題があり、デジタル化によりどんな解決策があるのかを分析する「現状分析・課題設定」。続いて、課題に応じたITツールを選定し、実際に導入を実行する「デジタル化の実行」。さらに、導入したツールを継続的に活用し、業務と経営に根付かせる「デジタル化の定着」のサイクルを回していくことです。
このサイクルを繰り返し回していくことで、企業は自己変革力と持続的な稼ぐ力を向上させていくと考えられます。中堅・中小企業のためのデジタル化に向けた具体的な支援策については、後述します。