補助金の申請はベンダーが支援、今年度からコンサルも補助対象に

――企業がIT導入補助金を受けるプロセスを教えてください。

 中小企業・小規模事業者等の補助金申請者は、「IT導入支援事業者」からのサポートを受けて申請します。IT導入支援事業者とは、ITツールを提供するベンダーであり、そのITツールと共に自社を「IT導入補助金事務局」に申請し、その審査を受け、事務局に承認された後に、登録されます(図4参照)。

 ベンダーが審査を受ける際には、対象となるツールの販売実績や事業活動実態、価格の根拠となる資料の提出が必要です。事務局はそれを精査し、ツールの実績と信頼性、価格の妥当性のあるツールのみを登録し、公開しています。

 つまり、補助金利用を希望される企業は、信頼性のある多数のベンダーとサービスの中から、自社に適したものを検討できる仕組みになっています。ツールとベンダーはIT導入補助金の公式サイトで簡単に検索できます。

 登録は毎年更新しており、昨年度事業の終了時点では登録されているベンダーの数は1万社を超えており、登録されているツールの数は10万を超えていました。

――補助金交付申請は難しくないですか。

 ベンダーとパートナーシップを組んで「共同事業体」となり、補助金交付を申請することが必要となります。ベンダーが申請書類の作成をサポートすることになっているので、手続きのハードルは低くなっています。

――コンサルタントの活用も補助対象なのですか。

 活用コンサルティング費用は、25年から補助対象になりました。IT導入補助金制度は、デジタルツールの導入支援で止まるのではなく、ツールの活用を通じて中小企業に生産性を向上してもらうことが目的です。そこで、実際に現場で使いこなしてもらうところまでをサポートするように制度を強化しました。

――企業がすでに利用しているツールへの補助を申請することはできますか。

 それはできません。補助金の対象になるのは、新規導入またはバージョンアップに限られます。すでに導入済みのツールのアカウント数を追加する、あるいは更新契約を行うといった活動は補助対象になりません。

 ただし、機能や提供元が異なる他社製品への切り替えや、明確に仕様が異なる新バージョンの導入であれば、補助対象となる場合があります。

 また、注意点として、補助金交付後に、契約期間を満たさず利用を中止した場合、補助金の返還義務が生じる場合があります。申請時には、運用計画の実現性を慎重に検討する必要があります。

*後編では、「IT導入補助金制度」の具体的な内容と申請プロセスについて、詳しく聞いていく。