大阪で暮らし、30年以上会社を経営する中国人の女性経営者は、大阪の住所を永住権を取得し、長年中国で生活している複数の友人に“貸している”という。現在の日本の法律では、「すでに永住資格を取得した者の母国への一時帰国が1年を超える場合は、事前に再入国許可を申請すれば、再入国許可の有効期限は取得してから最長5年。有効期限内であれば、出国の度に申請する必要はなく、1度許可を受けていれば何度でも出入国できる」となっている。

 こうした人々は日本に長期不在でも「永住資格」を維持する。気が向いたら日本に顔を出す程度であれば問題ない。日本では「無職」(収入なし)とみなされるので、1円の納税もしない。逆に日本政府による国民へのさまざまな「給付金」をもれなく丸ごと受け取る。例えば、コロナ時の10万円の給付金や、大阪市の「物価高騰対策給付金」などだ。

 こうした日本にいない「永住権」取得者は、年間払う国民健康保険料は最少額である一方、最大限に医療保険を使っている。上述の女性経営者に住所を借りているある女性は、ガンを患い、日本に来て数回手術を受けた。その際には「高額療養費制度」を利用し、自己負担はわずかな金額で済んだという。

 この例のように、1人の住所を3、4人に貸しているというケースも珍しくない。実際には、いったいどれくらいの数の日本に住んでいない「永住者」がいるのだろうか。その人数を日本政府は把握しているのだろうか。

ビザ緩和措置の「盲点」を突く悪用事例

 ビザ緩和措置にも「盲点」がある。

 昨年末の日本政府による中国人向けのビザ発給緩和措置では、富裕層向けに10年間有効な観光ビザを新設し、3年や5年のマルチビザの滞在期間を延長した。1回の入国につき最長90日、年間合計180日間の滞在が可能である。

 これらのビザは年収や保有資産の条件が付いているが、中国人の得意技である「上に政策があり、下に対策がある」(国が政策を決定すれば、人々はその抜け道を見つけ出す)をもってすればどうということはない。