トミー・ラソーダ監督Photo:J.D. Cuban/gettyimages

任せるための第一歩は
興味を持って部下を「見る」こと

 任せ上手な上司、経営者は、共通して『観察力』にたけています。アンテナを立てて観察すれば、部下の状態、現場の状況が把握できるので「どのように声を掛ければ良いのか」や「任せるタイミング」などが分かります。

 部下はAIやロボットとは異なり、生身の人間ですので、毎日、考えていることやコンディションが違ってきます。午前中に起こった出来事に影響されて、午後はモチベーションが下がってしまい、仕事が手につかない状態になることもあるでしょう。部下の心境や状態が常に変化していることを、しっかり把握していかなければ、仕事を任せることはできません。

 変化に気づくためには、部下に興味を持って観察することが不可欠です。「声のトーン」「話すスピード」「表情」「目の動き」「姿勢」「歩き方」「態度」「仕事への取り組み方」など、できるだけ細かく観察することがポイントです。

 過剰に反応する必要はありませんが、前日と比べて気掛かりな点があれば、こちらから声を掛けるなどして、部下の状態を把握してください。必要であれば、個別ミーティングを行い、じっくり話を聞く機会を設けましょう。

部下の信頼を得るための
一番シンプルな方法

 部下に仕事を任せるには、信頼関係の構築が欠かせません。部下から信頼がおける上司、経営者と思われるための一番シンプルな方法は、「話を聞く」ことです。人は自分の話を聞いてほしいと思っています。聞いてもらえていると感じれば、人間の根源的な欲求の一つである「承認欲求」が満たされます。自分のことを認めてくれている上司、経営者から任せられた仕事であれば、頑張って取り組もうと思えます。

 話を聞くときは、しっかり相手の話に耳を傾けて、受け止めながら『傾聴』することが大切です。私が以前、コミュニケーションについて学んだスクールでは、相手の話は『全身で聞きなさい』と教えられました。「ながら聞き」をするのではなく、何か別の作業をしていたとしても、手を止めて、体も意識もすべて相手に向けて聞くことだけに専念するということです。パソコンのキーボードを操作しながらや、スマホを見ながら話を聞くのはNGということです。