重希土類で「ポスト中国」の
可能性を秘めるグリーンランド
こうした中で注目されているのが、グリーンランドである。
地球温暖化の影響により、グリーンランドの氷床は年々後退している。NASAによれば、毎年250ギガトン(1ギガトンは10億トン)以上の氷が溶けており、特にグリーンランド南部・沿岸部では岩盤が露出し始めている。
これを受けて、もともと資源の宝庫だと考えられていたグリーンランドにおいて、資源探査や開発が可能な地域が急速に広がっている。
グリーンランド南部の「クバネフィールド」や「ナルサーク」などには、ジスプロシウムやテルビウムといった重希土類を豊富に含む鉱床が確認されており、地質的には中国に匹敵するポテンシャルを持つと評価されている。
グリーンランドは重希土類においても「ポスト中国」となる可能性を秘めている。すでに複数の国際企業が採掘権の取得に名乗りを上げており、かなり前からグリーンランドにおける資源争奪戦の口火は切られている。
トランプ大統領がグリーンランド購入を進めようとしているのは、米中貿易戦争のなかで、グリーンランドに眠るレアアースが極めて重要な意味を持つからである。
グリーンランドが米中両国に対して中立的な立場を取ればアメリカには不利となるが、100%の権益を確保できれば、レアアースでは互角の戦いが可能になり、半導体など他の分野で中国を上回る優位性を確保できる。アメリカにとっては大きな戦略的メリットとなる。
「100%の権益」とは、まさに「購入」することにほかならない。
「グリーンランド購入」が
現実的ではない理由
とはいえ、グリーンランドの「購入」はそもそも可能なのだろうか。
グリーンランドはデンマークの自治領であり、外交や防衛はデンマーク本国が担っている。
その一方で、鉱物資源の開発については現地政府が独自の権限を持っており、たとえアメリカが多額の資金を用意しようが、住民の同意がなければ開発を進めることはできない。
実際、グリーンランドの住民からは「外資に資源を奪われるのではないか」「環境破壊につながるのではないか」といった懸念の声が強く出ており、開発には慎重な姿勢が目立つ。