それをコップで丸くくり抜くと、スーパーで売っているあの餃子の皮のようなものが次々できる。見事な手際だ。
「皮は買わずに手作りするのがいいの?」と尋ねると、「できあいの皮なんて売っていないよ」平然と返される。
そうなのか!たしかに日本のスーパーで当たり前にある餃子の皮は、市場でも見かけなかった。ウズベキスタンの人たちは毎日のように小麦粉をこねて麺やパンを作るから、ゼロからの皮作りも苦じゃないのかな。
次に、中に包む具を作る。肉ではなく卵だ。ボウルに卵を割る。ひとつ、ふたつ、みっつ…ななつも!?
そこに牛乳、ひまわり油、溶かしバターを加える。これをどう包むんだろう。ボウルの中の液体は、どう考えても具材として「包める」ような硬さではない。おたまですくってどうにかして皮の中に注ぎ入れるんだろうか。いや皮は平らなんだからこぼれてしまう。首を傾げていたら、クルサンドは思いもよらぬ道具を取り出した。
「え、ティーポット!?」
白地に薄い紫の花柄がついたそれは、今朝の朝食でお茶が入れられていたものだ。まさかと思ったが蓋を開けておもむろに卵液を注ぎ入れ、ティーポットを満たした。餃子皮は半分にたたみ、半円状になったその両端3分の1ずつくらいをフォークでしっかり押し付けてくっつけて袋状にする。
そして真ん中の開口部からティーポットでお茶を注ぐかのようにして卵液を注ぎ入れ、皮の中に満たしていくのだ。8分目くらいまで入れたらティーポットを置き、餃子の口を指でつまんで閉じる。それをそのまま沸騰した鍋の湯の中にぽとんと落とす。数分ゆでて浮いてきたところをすくって、氷水に放つのだ。
つるんとした食感が心地よい
夏にピッタリの卵料理
ここまで一連の流れで一気に進めるのだが、ひとつひとつの作業がそれなりに難易度が高い。餃子の皮の接着がゆるいと液を入れた瞬間にこぼれてしまうし、卵液を入れすぎると破れる。普通の餃子のようにある程度の個数を包んでまとめてゆでるということができないから、包む作業とゆでる作業を同時並行でやらなければいけない。