その他に、バナナをスライスして揚げ焼きにし、グリーンピースを冷蔵庫から出して解凍し、チーズとハムも取り出してきて…なんだかアイテムが増えていく。これは本当に朝食なのか?

想像をはるかに超える
豪華な目玉焼き

 さあ、盛り付けだ。皿にトルティーヤを敷いたら、ハムをのせ、その上に目玉焼き、そしてチーズと重ねる。周りにはこんがり揚げ焼きにしたバナナを配置し、さらにグリーンピースを散らし、ようやく最後にサルサをたっぷりまわしかける。

 ウエボス・ランチェロスもなかなか豪華だったが、これは私の目玉焼き史上最も豪華に仕上げられた目玉焼きだ。というかもはや具材に隠れて目玉が見えない。

 ナイフを入れ、卵とサルサを一体化させ、ハムやチーズも絡める。グリーンピースのぷちぷちした食感を楽しんだり、焼いて甘さの増したバナナにピリ辛のサルサを絡めてみたり、いろんな組み合わせで食べてみているうちに、かなりボリュームのあったひと皿がきれいになくなってしまった。

 ウエボス・モトゥレニョスは、モトゥル町で生まれた料理らしい。いつかモトゥル町に行って、「目玉焼きには何をかけるか?」という議論をしてみたい。醤油をたらすだけというのはどう思われるのか。

 メキシコの豪華な目玉焼きの世界にすっかり圧倒されていたが、さらにちょっと変わった欲張りな食べ方があると言う。ルシオはにやにや笑いながら語る。

「卵2つで目玉焼きを焼いてトルティーヤにのせるところまでは同じ。次はサルサなんだけど、赤と緑の2種類を作って、2つの目玉にそれぞれ別のサルサをかけるんだよ」

 そうすると左右で色の違う目玉焼きができる。片や赤、片や緑。面白い見た目だ。ルシオがにやにやしていた理由はそのネーミングで、ウエボス・ディボルシアドスというのだが、直訳すると「離婚した卵」。なるほど、たしかに別れた見た目だ。なんてセンスのある名前なんだ。

 世界一の卵大国、メキシコ。サルサをかけた目玉焼きの世界は思いもよらない広がりをもっていて多様で、シンプルな料理にこそ奥深い楽しみがあることを教えられた。