ウズベキスタンで食べたのは
「冷たい卵餃子」
卵が好きだ。世界の卵料理を集め始めたのは、特に卵が好きだったわけではなく卵に関する仕事をしたのがきっかけだったが、以来卵料理の広がりに魅了されてしまった。
卵は、ふわっと膨らんだりプルプルに固まったり変幻自在で、ダイナミックに変化するから面白いのだ。世界各地で数々の卵料理に出会ってきたが、中でも驚いたものの1つが、ウズベキスタンのトゥンバラク。
一言で言うと卵餃子なのだが、冷たくてつるんとしていてヨーグルトをかけて食べるという、他に見たことのない個性的な卵料理なのだ。
ウズベキスタンは中央アジアに位置する内陸国で、夏と冬の気温差がきわめて大きい。
その中でも特にヒヴァは寒暖差の大きい砂漠の都市で、夏は40度に届くこともあるが、冬はマイナス10度まで下がる。私が訪れたのは5月だったが、この時期でも昼間はもうジリジリと暑くて、夏はどうなっちゃうんだろうと思うほどだった。
滞在した家族はレストランを営む一家で、通りに面したレストランのすぐ裏に自宅を構えていた。レストランを回すのは夫アタベックとその両親たち、家の普段の料理を作るのは妻のクルサンド。幼稚園に通う2人の娘は手に負えないくらいのやんちゃっ子で、そちらに目を光らせながら10ヵ月の息子の世話をしつつ台所に立つクルサンドは、もうそれだけで大仕事だ。
特に暑かったその日は、「ヒヴァにきたからにはトゥンバラクを食べなきゃ!」というアタベックの一言で昼食にトゥンバラクを作ることになった。「卵の餃子なんだよ」と言うけれど、卵と餃子が一緒になった話なんて聞いたことないから、形の想像すらつかなかった。
ウズベキスタンでは
餃子の皮は手作りが普通
まずは生地づくりから。クルサンドは息子をベビーカーにのせて自分の脇に置き、作業を開始した。小麦粉をこねて台に広げて麺棒で伸ばしていくのだが、最初は肩幅程度の麺棒を使い、ある程度広がったら今度は1m強もある麺棒でさらに薄く大きく広げていく。