ANAやJALのようなフルサービスキャリアの牙城だった長距離国際線に、格安航空(LCC)が続々と参入している。「安かろう悪かろう」のイメージを払拭しようと、LCCも進化しているのだ。一方で、大手はタイムセールやマイレージで割安感をアピールしている。本当にコスパの良い選択とは?LCCビジネスを理解しながら考えてみよう。(ライター 前林広樹)
>>『格安航空LCC「長距離路線」ランキング【完全版】韓国勢が多いのはなぜ?』から読む
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進化・多様化するLCC最前線
格安航空(LCC)が登場してから40年以上が経過し、新規参入が増える中で、従来の常識にとらわれない多様化が進んでいる。
これまでは以下のような特徴がLCCの常識とされてきた。
・短距離の路線を高頻度で運航する
・ボーイングB737シリーズやエアバスA320シリーズなどの小型機を使用
・就航都市の主要空港(日本で言えば羽田や伊丹など)
・機内食などのサービスは有料で提供、もしくは存在しない
元祖LCCともいえる米国のサウスウエスト航空や欧州のライアンエアーでは、これらの原理原則が今でも貫かれることが多い。
一方で、LCCの常識破りとしては、まさにランキングで紹介した長距離路線が挙げられる。ランキングには挙がらなかったが、マレーシアの首都クアラルンプールを拠点とするエアアジアは、東南アジア各地からソウルや東京、北京といった中距離都市にエアバスA330などの長距離運航も可能な機材を導入している。なお、エアアジアもかつてクアラルンプール~ロンドン線(1万539km)を運航していたこともある。
また、空港については、インフラが整わない地域では、LCCも大手と同じ空港を利用するケースが多い。エアアジアやセブパシフィック航空(フィリピン)、ベトジェットエアー(ベトナム)がその代表例といえるだろう。
他方、米欧でもイージージェット(英国)やジェットブルー航空(米国)をはじめ1990年代後半から2000年代に生まれた新規航空会社は、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港やパリのシャルルドゴール空港などの大空港を使うことで集客力を高めている。
また、機内サービスを充実することで差別化を図るケースも出てきた。一例として、ランキングにも入ったエアプレミアは北米路線で以下のようなサービスを提供している。
・機内食は無料で2回提供(飲み物も無料、アルコール類のみ有料)
・各座席に付いたモニターで韓国映画を放映
・手荷物持ち込みは23kgまで無料
アルコール類が有料なことを除いて、ほとんどフルサービスキャリアと同等だ。それもあってか、エアプレミアは安さを売りにするというよりも、LCCとフルサービスの良いところを両取りした「ハイブリット航空会社」を自称してアピールしている。