たとえば、粉から淹れたコーヒー100ミリリットル中には、60ミリグラムのカフェインが含まれています。同量の煎茶には20ミリグラム、紅茶には30ミリグラムのカフェインが含まれています。

 エナジードリンクや栄養ドリンク剤、眠気覚まし用飲料のカフェイン濃度には幅があり30~300ミリグラムとなっています。一方で、頭痛薬や鎮咳去痰薬には、製品によって異なりますが、1回の摂取量あたり80~100ミリグラム程度含まれています。

カフェインの吸収スピードには
4倍もの個人差あり

 お茶やコーヒーに含まれているカフェインですが、食品などから抽出・精製されたものは、医療用医薬品として使用され、劇薬にも指定されています。

 カフェインは、摂取後素早く大部分が体内に吸収されます。ただ体内に吸収されるスピードには個人差があり、速い人では30分で血中濃度が最高値に到達しますが、遅い人では120分かかります(注1)。

 私たちのさまざまな臓器には、血管の中を流れる毒物などの有害物質が血流を介して臓器内に容易に流入してこないようにするために調節するしくみがあります。このしくみを血液関門と呼び、脳、胎盤、乳腺、精巣に血液関門があります(図8.1)。

図8.1:血管関門の例(血液脳関門)坪井貴司ほか『みんなの生命科学 第2版』, 化学同人, 2024. 拡大画像表示

 しかしながら、カフェインはこれらの関門を容易に通過します(注2)。そのため、脳に届いて作用します。また乳腺にも届くため、母乳を介して乳児がカフェインを摂取することもあります。

 私たちが毎日摂取する食事に含まれる栄養素は、消化管から肝臓をつなぐ門脈を介して肝臓に輸送されます。そして、肝臓に存在する何百種類もの酵素によって分解され、分解されて得られた物質を

 用いて他の物質の産生を行います。これらの一連の過程を代謝と呼びます。

(注1)Blanchard, J. and Sawers, S. J. European Journal of Clinical Pharmacology, 24:93-98, 1983.
(注2)Arnaud, M. Metabolism of caffeine and other components of coffee. In:Caffeine,Coffee and Health. Garattini,S.(Ed.)Raven Press, New York, pp.43-95, 1993.