飲酒後のコーヒーを
避けるべき理由
一方で、肝臓には、私たちの体にとって有害な薬剤や食品添加物、細菌などの病原体も運ばれ、無毒化が行われます(図8.2)。

また、今回取り上げたカフェインも肝臓で無毒化されます。この一連の過程を解毒と呼びます。この解毒は、肝臓にある薬物代謝酵素、シトクロムP450(CYP:シップと読む)によって行われます。
このCYPは、異物を解毒して、水に溶ける物質へと分解し、尿として排出するために日々活躍しています。
ヒトには約60種類ものCYPが存在します。カフェインはそのうちのCYP1A2によって分解されます。CYP1A2によって分解されカフェインの血液中の濃度が半減するまでの時間は、約4時間だといわれていますが、これには個人差があり、2~8時間程度だと考えられています(注3)。
また、CYP1A2はエタノールの代謝、つまりお酒の代謝・解毒にも重要なはたらきをしています。酔いざましにコーヒーを飲むことも多いかもしれませんが、実は飲酒後のコーヒーは、エタノールの分解だけでなく、カフェインの分解を遅らせることになるため、避けるべきです。
ましてや、飲酒しながらコーヒーを飲む、焼酎のコーヒー割などはいちばんよくありません。一方、たばこに含まれるニコチンにはCYP1A2遺伝子の発現を誘導する作用があるため、習慣的に喫煙をしている人はカフェインの解毒能力が高くなっています。
ヘビースモーカーといえば、コーヒーをたくさん飲んでいるイメージですが、その裏にはこのような理由があったのです。
(注3)Balogh, A. et al., European Journal of Clinical Pharmacology, 48:161-166, 1995.