ただ、リスク低減手術には、身体的な負担(手術自体や女性ホルモンの摂取など)や容姿の変化といったデメリットがあるため、主治医とよく相談する必要があります。

乳がんや卵巣がんリスクの
具体的な予防対策

 HBOCと診断されても、乳がんや卵巣がんを発症していない場合、乳がんのリスクに対しては、18歳から毎月自己視触診、25歳くらいから医師による半年ごとの視触診および1年ごとの乳房X線撮影(マンモグラフィー)、そしてMRIを加えた検診が勧められます。

 一方卵巣がんのリスクに対しては、30~35歳、または家族で最初に卵巣がんと診断された人の発症年齢の5~10歳早くから、半年ごとの経腟超音波画像検査と腫瘍マーカー(CA─125)の測定を受けることが勧められることもあります。

書影『よく聞く健康知識、どうなってるの?』(坪井貴司、寺田 新 東京大学出版会)『よく聞く健康知識、どうなってるの?』(坪井貴司、寺田 新 東京大学出版会)

 ただし、現時点では卵巣がん検診の明らかな有効性は示されていません。なおアンジーは、「自分にはどのような治療選択肢があるのかを知り、その中から自分に合ったものを選択することが大切だ」と語っています(注6)。

 これからの時代、体や細胞のしくみ、遺伝子や遺伝のしくみ、また病気のことを正しく知り、正しく恐れることが、ますます重要になると思われます。

(注6)Jolie, A., The New York Times, 2013.5.14. https://www.nytimes.com/2013/05/14/opinion/my-medical-choice.html