
献血者数が減っている。少子化で献血できる年齢層(16~69歳)が減少していることに加え、企業が社会貢献の一環として行ってきた集団献血への参加者が減っているためだ。特に20~40代の減少が著しい。
逆に輸血用の血液製剤を必要とする高齢者は増加しているので、このままでは将来の安定供給に支障がでる可能性が指摘されている。
注射嫌いな人にとって献血のハードルは高いが、それでもメリットはある。
一つは事前検査のついでに生化学検査と血球計数検査ができること。生化学検査の項目は肝機能(ALT、γ-GTP)、全身状態を把握するアルブミンなどのほか、血中コレステロール値と糖尿病検査の一つでもあるグリコアルブミン値もわかる。事前に希望すればウイルス性肝炎や梅毒検査の結果も親展書簡で知らせてもらえる。
血球計数検査は酸素を運ぶヘモグロビン濃度が献血基準を満たしているかの確認とともに行うもので、赤血球の“健康状態”や免疫能を発揮する白血球数、そして出血を止める血球成分である血小板数もわかる。
献血という行為自体が血液がんの発症を抑える可能性も指摘されている。
英国とドイツの研究グループは、生涯の献血回数が100回を超える「頻回献血者」の男性217人(年齢60~72歳)と、10回未満の「散発献血者」212人(同)の血液細胞から採取した遺伝子変異を比較。その結果、頻回献血者の体内では、失血のたびに増加する造血ホルモンのエリスロポエチン(EPО)の存在下で、特定の遺伝子変異が増え赤血球を作る能力が高まっていた。
さらにこの変異細胞と血液がん一歩手前の細胞を一緒にしてみたところ、EPОがたっぷり分泌されている環境では、がん細胞の増殖が抑えられる可能性が示唆されたのだ。
研究者は「献血というストレスに身体が適応する過程で、血液系がより強化されたと考えられる」としている。
上記の研究はサンプル数が少ないので断言はできないが、あなたの献血という行為は、いつか見知らぬ誰かと自分を救う可能性があるのかもしれない。
ちなみに7月は献血活動を啓発する「愛の血液助け合い運動」月間だ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)