たとえば、ソニーでは、技術開発に専念する井深大氏を、マーケティングや事業展開において盛田昭夫氏が右腕として支え、日本を代表する音響機器メーカーとして成長させたことはよく知られています。サントリーも、ビジョンを描く佐治信忠氏(リーダー)と実務家の鳥井信吾氏(右腕)のコンビで成長を加速させました。

 トヨタ自動車、ホンダ、楽天、ファーストリテイリングなどの日本を代表する企業でも、同様に社長の右腕が存在しています。もしも、これらの会社の社長が自分のコピーのような存在を右腕にしていたとしたら、現在のような企業規模になっていなかったと思います。

安心して任せられる
右腕に育てる方法

 既存の部下の中から優秀と思える人物を右腕に抜擢(ばってき)する場合は、「なぜあなたを右腕として指名したのか?」の理由を、これまでの実績を踏まえて、具体的に説明します。そして、右腕として、何にどのように取り組んでほしいのかを具体的に伝えて、右腕のやるべきことを明確にします。

 このとき、右腕に選ばれなかったメンバーの一部から反感を抱かれることもあります。「あいつ一人だけがえこひいきされている」とか、「上司に目を掛けられて、いい気になっている」などのやっかみの気持ちを持たれてしまうと、右腕として上手く立ち回れなくなります。

 右腕に選んだ人物よりも社歴や年齢が上のメンバーに対しては、労いと感謝を伝えるとともに、右腕を支えてチームの底上げ役を担ってほしいとリクエストします。こうして各メンバーの役割を明確にし、事情を理解し納得してもらうことで、協力的な態度を取るようになります。

 また、右腕を選ぶ過程においては、右腕候補である部下とは、他のメンバーよりも、より濃く、より密にコミュニケーションを取りましょう。できれば、食事を共にすることがお薦めです。食べたり、飲んだりすると、気持ちがリラックスできるので、お互いに本音で話しやすくなります。