右腕を育てる上で、あえて無理難題と思えるような課題を与えることも時には必要です。課題を解決する経験を通して個人としてのスキルが大幅にアップし、現場リーダーとして一皮むけた状態になります。もちろん、任せっぱなしにするのではなく、壁にぶつかったときには、いつでもサポートできる体制が整っていることも伝えておきます。そうすれば、肩に力を入れ過ぎることなく安心して、業務に取り組めます。

 現場のリーダーとして活躍している右腕スタッフは自分が意識しているか否かに関わらず、周りのスタッフに大きな影響を与えています。そのことを本人に理解させ、普段からリーダーとして相応しい言動を取ることを求めていきます。そうすることで、右腕としての自覚が芽生えます。

右腕候補への
期待のかけすぎは禁物

 大学卒の新卒採用を始めたばかりの中小企業では多くの場合、入社してくる新入社員を将来の「社長の右腕」候補という位置づけで捉えています。そうなると、中途採用組とは、あきらかに期待のかけ方が違ってきます。いきなり、新規プロジェクトの主要メンバーに加えたり、重要な取引先とのミーティングに同席させたりと、過密かつストレスフルな環境に常に置かれることが多々あります。

 新入社員たちも、初めのうちは頑張ってくらいついてきます。とはいえ、数カ月前までは学生だったわけですから、できることには限界があります。キャパシティは決して広くはありません。常に社長や周りからのプレッシャーを感じながら仕事を続けていると、ある日、心が折れて、そのまま体調不良となり休職や退職になってしまいます。「期待のかけすぎ」は禁物です。

 野球のピッチャーは、本番で投球する前にブルペンで肩慣らしをしてから登板します。いきなり全力投球をするには怪我のもとですし、あらかじめ投げ込んでおかないと、本調子で投球できないからです。これと同じように、右腕候補を迎え入れたときは「慣らし運転」が必要です。具体的には、会社の仕組み、文化を理解してもらい、チームの在り方、仕事のやり方に慣れること。組織の中の人と良好な人間関係を築くことが必要です。

 慣らし運転をしている過程で、上司、経営者は話を聞く時間を頻度多く持つようにしてください。そうやって、右腕候補として、じっくり育てる環境を整えることが大切です。