たとえば普通に小食の人が焼肉きんぐに行くとします。断言しますが、デザートは1人で3品は注文することになるでしょう。最初はソフトクリームひとつだけ注文するでしょうけれども、他の人の食べているのをみて追加でゼリーを注文したり、杏仁豆腐を注文したりするのです。

 さらに期間限定メニューがあって、現在は韓国がテーマで、新大久保で人気の焼肉メニューや韓国デザート、〆の辛ラーメンまできんぐコースを注文すれば選ぶことができます。

 要するに焼肉きんぐに行くと、他の焼肉チェーンとちがって「あれも注文しよう」「これ食べてみたい」といった形で、まるで回転寿司のように多種多様なメニューを注文してしまいます。これが場を盛り上げます。

 もうひとつ忘れてはいけないのが、焼肉きんぐの店内は外食チェーンとは思えないほど従業員の人数が多いのです。その従業員たちが若くて元気な人が多くて、なんというか賑やかなのです。

 これはある意味で時流に逆行した経営です。いい意味で逆行しています。他のチェーンはDXによる生産性向上を目指していて、タブレット端末で注文を入力させたり、ネコ型ロボットで配膳したり、キャッシュレスのテーブル決済を導入したりすることで、従業員の数を減らしています。広いファミレスのフロアをバイト2人でカバーしている店もあるぐらいです。

 焼肉きんぐも実はネコ型ロボットを店舗あたりで3~4台導入していますし、注文はタブレット経由です。ですから、フロアは少ない従業員でも回せそうですが、なぜか人数が多いのです。しかも配膳はロボットに任せていて、従業員は焼肉ポリスの腕章をつけてフロアをぶらついて客に美味しい食べ方を指導するだけ。

 コンサルタントを導入したら間違いなく合理化を提案されそうな店内ですが、このざわざわした従業員の多さが実は顧客には居心地がいいのです。雰囲気も明るくて楽しいし、何かあったとき、たとえば注文が来ていないとか網を交換してほしいというときに従業員がつかまらなくてイライラすることもありません。