しかしKPIは本来、成績表などではなく、登山における「現在地を示すアプリ」や「コンパス」のような存在であるべきです。どの項目の変化が将来の成功を示すのか、どんな兆候がリスクのサインになるのか。KPIは未来を見通し、行動と意思決定の基準を提供するレンズなのです。
もう1つ重要なのは、KPIを評価のための数字ではなく、組織全体の視点を揃える道具として捉えること。指標が明確であれば、営業・開発・マーケティング部門の互いの認識のズレを減らし、共通のゴールに向けた対話が生まれます。
このように、KGI・KPI・NSMを正しく位置づけることが、プロダクトの成功を見極め、持続的に価値を生み出すための出発点になります。
売り上げだけでは成功が測れない理由と
プロダクト指標の必要性
プロダクトが使われているのか、また使いたいと思われているのか。プロダクトが成功しているかどうかを知るには、そうしたユーザーとの関係の「深さ」や「質」に目を向けなければ、表面的な数字に惑わされることになります。
例えば、ある業務支援ツールは、初期導入が進んで売上は好調でしたが、3カ月後には月間利用者数が大きく減少。サポートには「難しくて使っていない」「最初だけ使っていたが続かなかった」といった声が相次ぎ、翌年の契約更新率は大きく下がってしまいました。
このような事態を未然に防ぐには、PLでは捉えきれない、プロダクト特有の指標を持つことが重要です。代表的な指標を挙げましょう。
・DAU/MAU(デイリー/マンスリーアクティブユーザー数)
プロダクトがどれだけ使われているか、利用習慣が定着しているかを測る指標。毎日使われるサービスならDAU、月1回程度の利用想定ならMAUを使うのが一般的です。
・リテンション率(継続率)
初回利用からどれだけ定着しているか、使い続けられているかを示します。DAUやMAUと密接に関係しており、継続的な利用習慣の有無を見極めるため、アクティブユーザー数とセットで観測されることが多い指標です。