「売り上げは好調なのに失敗」
北極星指標NSMが示す成功の条件

 多くの組織では、PL上に現れた数字だけを成果の物差しとしがちです。しかしPLはあくまで「結果」の指標であり、「予兆」や「価値の実態」を教えてくれるわけではありません。

 従来からの売上や損益といった指標の数字は良いのに事業に支障をきたしている場合、何が組織に起きているのか。考えられる2つの例を挙げてみましょう。

 1つ目は組織間のコミュニケーションの不調です。売上部門が短期的な成果を求めて開発を依頼する一方で、開発側は技術的負債の解消や基盤整備に時間を割きたいと考えている場合、優先順位の違いから対立が生まれます。売上直結の機能開発ばかりを求められた開発チームは、本当にユーザーのためになるか疑問視しながら対応せざるを得ず、根本的な問題解決に取り組めない状況が発生します。

 2つ目は短期的な数字を追うことによる長期的な問題です。例えば、ECサイトでクーポンを大量配布すれば、見かけ上の売上は向上しますが、ユーザーの定着には繋がりません。これは上場を目指すスタートアップや大企業の新規事業でしばしば見られる状況で、無理な数字作りが後に大きな赤字を生む原因となることがあります。

 では、真の成功を測る指標とは何でしょうか。

 プロダクトが「成功している」といえる条件は、プロダクトが真にユーザーにとって価値ある存在となっており、その価値が持続可能で、再現可能であることです。「プロダクトは成功しているのか?」という問いに向き合うには、売上だけでは見えない価値を捉えるための新しい「視点」が求められます。

 そこで今回は、プロダクトが成功している状態を測るための指標として近年注目されている「NSM(North Star Metric:北極星指標)」という概念を紹介します。NSMは、プロダクトがユーザーに届ける核心的な価値を、たったひとつの指標に凝縮して捉えるアプローチです。