この頃から、政府の会議などでも自立支援という言葉がたびたび出てくるようになり、現行の制度では「自立」とは「サービスが不要な状態」と解釈されるようになった。
こうしたことで、サービスの利用を減らすことが目的化されるようになり、介護保険からの“卒業”を求められる高齢者が増えたように思えてならない。
例えば、軽度の要介護者への給付が縮小されていることが挙げられる。2015年に行われた介護保険制度の改正によって、要支援1、2という軽度の高齢者が利用していた訪問介護や通所介護が、従来の介護保険の枠組みから外れていることからも明らかだろう。
さらに2017年の法改正で、自立支援に成果をあげた自治体に対して、交付金を多く配分する「保険者機能強化推進交付金」の制度が創設された。
自治体に対して財政的なメリットを餌に、自立支援を促進させようとしているのだ。自治体が給付の抑制を競い合って、サービスの質よりもコスト削減が優先される状況を生み出しているとも言えないだろうか。
実際、利用者へのサービス提供を控える傾向が強まっており、結果的に高齢者やその家族が必要な支援を受けられない事態が生じているのだ。
介護保険料が値上がる一方で
年々制限される介護サービス
昨今の社会保障の負担増と給付削減の傾向も同じだ。介護保険料は値上がり続けるが、受けられる介護サービスは年々制限されている。負担は増えるがサービスが減るというのは、商品の値上げはするが商品の質は落ちますと言っているようなものだ。
一般社会で、値上げして質が落ちた商品を販売しようものなら、その会社には必ずクレームがくるだろう。介護保険料は任意ではなく強制的に徴収されているのだ。
つまり、介護保険制度は「介護の社会化」を掲げながらも、実際には利用者負担の増大、サービスの縮小、介護報酬の低迷をもたらし、介護現場と利用者の双方に大きな負担を強いている。