さらにいえば、仮に故人となんらかの契約を交わしていたとしても、正しく契約どおりに手続きが行われていることをどう担保するのか。悪質な業者であれば、いくらでも理由をつけて、故人の預金を引き出すことができてしまう。
ヘルパーに財産を寄贈する遺言書は
本当に本人が書いたのか?
このNPO法人について関係者から話を聞くと、他にもいくつも“怪しい点”がつきまとっていた。
その最たるものは遺言書だ。山根さんが亡くなる約7ヵ月前に書かれた遺言書は、震える手で書いたような文字でこうあった。
〈遺言者は所有するすべての財産を遺贈する〉
遺贈とは相続人以外の者に財産を渡すことである。山根さんは遺言書の中で、ある女性の名前を挙げて、彼女に財産を遺贈すると記している。その女性は、山根さんを生前担当していたヘルパーだ。
しかもこのヘルパーは長年山根さんを担当していたわけではないようで、このNPO法人の職員だった。

山根さんが亡くなった後、遺言書の存在を知った親族の1人は、自らの意志で本人が遺言書を書いたとは思えないと語っていた。
こうした身元保証を行う企業やNPO法人をめぐって、今、トラブルが頻発している。とくに問題となっているのは、サービス契約時に十分な説明がなされず、後になって高額な費用を請求されたり、死後の財産を業者に渡す契約が含まれていたりするケースだ。
また、解約時に返金が行われないなど、利用者が不利益を被る事例も報告されている。これらのトラブルは、身元保証サービスが法的な規制や監督がないことから起こっているともいえるのだ。