ご利用明細には、振り込みのために利用した銀行の支店番号が載っていた。その番号から、どこのATMから振り込んだのかがわかる。調べてみると、そのATMは、山根さんが契約していた身元保証サービスを運営していた法人のNPO事務所近くだった。

引き出された金の行き先は
過去利用した介護施設の近く

 ちなみに、死亡した人の預金を銀行から引き出すことは違法ではない。とはいえ、亡くなった事実を速やかに銀行に届け出て、銀行取引が停止されるのが一般的だ。

 財産保全の観点からも、多くの銀行がそうした運用をしている。もし親族などがなんらかの理由で死亡後に現金を引き出した場合は、死亡時の残高が相続財産になるため、領収書などを保管しておく必要がある。

 山根さんの関係者によると、振り込み先は山根さんがかつて利用していた訪問介護事業所だった。

 退去時のクリーニング費用として10万円、おむつ代が約6000円、その他おしりふきや手袋代などを支払うためのお金だ。

 なぜ、そう言えるかといえば、この訪問介護事業所が山根さん宛てに「清算書」、つまり請求書を送っていたからだ。この死亡診断書と銀行のご利用明細から、山根さんは生前、NPO法人の「死後の事務手続きサービス」と契約していたことが推察できるのだ。

 山根さんには「成年後見人」や「保佐人」はついていない。成年後見制度は、認知症などにより判断能力がない人や、将来判断能力が低下する人の財産を管理するなどのため本人や裁判所が選任する。

 成年後見は、本人に代わって不動産や預貯金などの財産管理を行ったり、本人の希望や身体の状態、生活の様子などを考慮しながら必要な福祉サービスや医療が受けられるように、利用契約の締結を行える。また、医療費の支払いなどを行ったりもする。

 つまり、悪質な業者から騙されて契約させられないよう本人を守る役目を果たす。