財産を守ってくれない
グレーな身元保証業者
一方で身元保証業者はどうか。ある司法書士によると、身元保証業者の大きな役割の1つが、入院時や介護施設入所時に身元保証を行ってくれることだ。他には、入院手続きや支払いの代行、医師との打ち合わせや、手術の同意書を代理で行うこともあるという。
終末期の治療方針について医師と確認を行ったり、介護でいえばケアマネが作成したケアプランの確認や、通院の付き添いなどを行う業者もある。
だが、こうした業務はグレーな面も多いと前出の司法書士は語る。
「本人に代わって、各種の契約や介護施設にかかった費用を精算するケースがあるとします。契約内容が本人の不利益にならないか、請求された費用が本当に正しいかどうかを身元保証会社は確認する義務もありません。
成年後見人は、本人の財産を守るという立場ですが、身元保証会社は本人を守るというより、代行が業務のメインです。つまり立場が異なる。そのため身元保証会社が、預貯金などの財産管理まで行う行為は、利益相反が生じることにもなりかねないのです。
極端な例を挙げれば、悪徳介護事業者と身元保証会社がグルだった際、本人の財産を守るどころか、本人に代わってさまざまな契約を行って、財産を食い潰してしまうということが起こっても不思議ではない」
「死人に口なし」を利用して
大金を請求し放題のリスクも
そうした話を前提とすると、山根さんが残した書類には腑(ふ)に落ちない点がいくつもある。
例えば請求書の宛名が、亡くなった山根さん本人宛てになっていたが、山根さんへの請求が本当に事実に基づいた正しい請求か、確認のしようがないと思ったのだ。
業者が架空のサービスを上乗せして山根さんに請求しても、サービスを受けた本人が亡くなっている今、請求金額が正しいかを、誰がどのように判断するのだろうか。
事実、この事業所の請求額と、山根さんの銀行口座から振り込みされた額も合っていなかった。
またNPO法人は、生前の費用支払いのための預託金の取り扱いや残金の扱いについて、契約書および死後事務委任契約を締結しているのだろうかという点だ。