広告集めに苦戦するのぶ
琴子(鳴海唯)のファインプレー
やなせたかしに比べて、暢についてはほとんど記録が残っていない。そのなかで高知新聞社から出ている「やなせたかしはじまりの物語:最愛の妻 暢さんとの歩み」という書籍は、暢が働いていた会社だけに彼女に関する情報が充実している。
「美容や手芸特集を担当」というのもこの本に書いてあった。岩清水が「原稿」としか語られないのは記録に残っていないことを気軽に創作しないという気遣いであろうか。いや、のぶのこれまでは創作だらけだから、そういうわけではなさそうだ。史実に基づいたフィクションを作るときの難しさを感じる。
ドラマではのぶと嵩は幼馴染。高知新報で再会することになる。第70回のラストで、新入社員の入社試験があり、立ち会ったのぶは、そこに嵩がいることに驚いていた。第15週からののぶと嵩が同じ職場で仕事をするエピソードが楽しみだ。
改めて第70回を順に追っていこう。
『月刊くじら』と名前もついて準備も本格化。広告をとったり、雑誌を置いてくれる書店を探して取次店を回ったり、編集業務のみならずたった3人で営業もやらなくてはならない。でもまあ現代でいうリトルプレス的なことと思えばないことはない。
のぶも広告取りを手伝うが、成果がなかなか出ない。
「絶望に追いつかれん速さで走らんと」と次郎(中島歩)の言葉を噛み締めながらがんばるのぶ。
雨のなか広告をとりにいこうとするのぶに、琴子(鳴海唯)が屋台で知り合った質屋の店主を紹介してくれる。たまるかーである。
琴子はのぶが忙しすぎて飲みにいけないのがつまらなく、仕事を手伝ってくれたのだ。質屋は一度、東海林(津田健次郎)が頼んで断られた店だったが、琴子のコネですんなりOKになった。
「こんなレディーらが雨のなかわざわざ来てくれたがや」と店長はにこにこ。これだってひとつの男女差別じゃないかと思うが、いいほうに“女”を使うこともあっていいということだろう。また、現代は飲みニケーションの価値が下がっているが、飲みの席での社交もときには使えるということだ。
