
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第68回(2025年7月2日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
夕刊のために張り切って
取材するのぶ(今田美桜)だったが……
夕刊を出す準備に張り切るのぶ(今田美桜)は、焼け跡の子供たちの声を聞きに行く。進駐軍からチョコをもらっていた子どもたちに、この町がどうなってほしい?と聞くと、元に戻ってほしいと子どもたちは答える。
前よりいい町にしたいねと、のぶは自分で言ってメモっているのはどうかと思うが、子どもたちは、あたたかい布団で寝たい、お腹いっぱい食べたい、亡くなったお父さんを返してほしいなどと切実な声をあげる。
いい町にしたいという漠然とした理想論よりも当たり前にあったものを取り戻したい、それが先決。前よりいい町にするのはその後だ。だからこそ生活者の生の実感を伝える必要があるのだ。
せっせと原稿を書いているのぶに、のぶさんは優しいですねと岩清水(倉悠貴)。のぶはどうしても子どもに目がいってしまうと控えめに言う。やっぱり、子どもたちへの負い目があるのだろう。
ところが、その頃、東海林(津田健次郎)は残念な知らせを受けていた。のぶがあんまり張り切っているので、言い出せない。