あるいは、テレビに出ている有名人について、「テレビで見たときの印象と違うかもしれないけれど、○○さん、実際に会ったらとても面白い方で、びっくりしました」と言う。これは、有名人と実際に会うことができるうえ、“裏の顔”を知りうる立場にあることをアピールするためだろう。
この手の知り合いマウントを取る人は、自分を少しでも大きく見せたい欲望が強い。煎じ詰めれば承認欲求が人一倍強いわけだが、実際には自分に自信がなく、自己肯定感も低いことが多い。
かといって、周囲から認めてもらえるように自身の価値を少しでも上げるべく、努力を積み重ねることもできない。必然的に、「~でありたい」という理想像と等身大の自分との間のギャップが広がる。
このギャップに耐えられないので、「○○さんと知り合い」と誇示することによって自身の価値を高めようとする。いや、むしろ知り合いマウントによってしかギャップを埋められないのかもしれない。
我が社のボンボン社長は
有名人との交流に精を出す
知り合いマウントを取るのが平社員であれば、影響はそれほど大きくない。せいぜい周囲が辟易し、「また言っている」と陰口をたたくくらいだろう。しかし、これがトップともなると、大変だ。
たとえば、「夜眠れず、朝出勤しようとすると吐き気がする」と訴えて心療内科を受診した20代の男性が勤務する広告会社の社長は知り合いマウントを繰り返す典型だった。
この社長はまだ30代だという。創業者である先代が急死したため、当時20代だった御曹司が社長になったそうだが、言葉の端々に「こんな賞をもらった」「こんな有名人と交流がある」といった自慢話を織り交ぜるらしい。実際、社長室には、賞状やトロフィー、有名人とのツーショット写真などが所狭しと飾ってあるとか。