だが、等身大の自分を直視したくないので、目の前の現実から目をそむけ、常に称賛されることを求める。いわば自信のなさの裏返しとして称賛を必要とするのだし、知り合いマウントを繰り返すのである。

 平社員が知り合いマウントを繰り返しても、大して実害はない。適当に聞き流しながら「自信がなく、承認欲求も満たされていない裏返しなんだな」と醒めた目で眺めながら、マウントさせてあげればいい。

 ときには、「今度紹介してください。是非お近づきになりたいです」と言ってみてはどうだろう。知り合いと吹聴している人物と実際には何の接点もない場合、向こうは少しあわてるかもしれないので、その様子を意地悪なまなざしで観察するのは、きっと面白いに違いない。

 しかし、ここで取り上げた社長のような組織のトップが知り合いマウントを繰り返す場合、本当に困る。

見つけたら逃げて!会社をダメにする「つながり自慢」社長が社長室に置きがちな“キケンな物”とは?『マウントを取らずにはいられない人』(片田珠美、PHP新書、PHP研究所)

 こういうタイプがトップだと、会社がうまくいかなくなるのは当然で、業績が落ちているのも、社員が次々と辞めていくのも、根本的な原因は社長にあるとしか思えない。だが、自分のせいとは夢にも思わない。

 税金の支払いという義務をきちんと果たさず、追徴課税を課される羽目になったとき、反省するどころか怒ったのも、世の中の決まりは「普通の人間」のためのものであって、自分のような「特別な人間」には適用されないと考える特権意識の表れだろう。

 有名人とのツーショット写真を社長室に飾り立てているような会社は倒産する確率が高いという話はよく聞く。この会社もその1つになりそうなので、できるだけ早く先輩を見習って退職し、転職先を探すのが賢明ではないだろうか。