そうすることによって、自分自身、さらには会社の底上げをしたいという欲望も潜んでいるのかもしれない。
厄介なのは、こうした言動がどのような感情をかき立てるのか、全然認識していないことだ。多くの社員の胸中に不安や反感、怒りや憎悪などのネガティブな感情を引き起こしているのに、それに気づいておらず、考えてみようともしない。
このような想像力の欠如と強い特権意識が同時に認められる人物がトップに座っていると、組織が腐っていくのはどんな業界でも同じである。
20代の男性によれば、この会社では心配なことが3つほど起きているそうだ。まず、会社の業績がかなり落ちているらしい。
先代の頃からつき合いのある得意先が、社長が挨拶にも来ないからという理由で契約を打ち切っているという話を先輩から聞いた。社長は、頭を下げるのが苦手なようで、営業にほとんど行かないので、新しい契約もなかなか取れないとか。
もう1つ心配なのは、税金をきちんと払っていなかったらしく、税務調査に入られたことだ。社長は、追徴課税で大変だったせいか、「この社会は、やり手から税金をぼったくることしか考えてない」と怒っていたという。
何よりも心配なのは、先代の頃から勤めている先輩がどんどん辞めていることだ。
嫌気が差して辞めていく社員が多いようだが、その一因として、社長が学生時代の友人とか趣味の仲間とかを会社に入れて、管理職のポストを与えることがあるそうだ。こんなことをされたら、先代の頃からいる人は、やっていられないだろう。
イエスマンとキラキラ人脈で
周囲を固めたハダカの王様
社長が引き入れた「お友達」は、とにかく社長の才能やセンスをほめることに徹しているという。そうしていれば、高い給料をもらえて、一緒に遊びに行けるのだから、「結構なご身分だ」と陰口をたたいていた先輩は真っ先に辞めてしまったとか。
「お友達」ばかり周囲に集めて、ちやほやされたがるのは、若くして社長に就任したものの実力も実績も伴っていないことを薄々感じているからかもしれない。