未就学児にも発生している
「装い身体トラブル」の実態

 それでは、子どもの場合はどうでしょうか。子どももおしゃれをおこなっている現状を踏まえると、子どもにおいても装い身体トラブルが生じていておかしくありません。

 これまで、子どもの装い身体トラブルに関する調査は散発的におこなわれていました。たとえば、東京都生活文化局により、化粧によるトラブルを経験した子どもが2.2%いることが明らかにされています(注5)。しかし、おしゃれの種類や地域等が限られているため、全体的な知見を見いだすのは少々難しいように思われます。

 そこで、改めてその実態を確認するための調査を2018年におこなってみました(注6)。この調査においては、子どもの装い身体トラブルについて、比較的幅広い内容について扱い検討しています。具体的には、未就学児、小学生、中学生、高校生におけるスキンケア、メイクアップ、ネイル、アクセサリー、ピアス、毛染め、体毛処理(調査では「脱毛・除毛」)、それぞれによる装い身体トラブルの経験割合について尋ねています。

 調査結果によると、装い身体トラブルの経験は、それぞれにおいて10%を切っています。しかし、「当該のおしゃれを経験した者」に限定した場合、装い身体トラブルの経験が3割以上のものがあります。また、未就学児の装い身体トラブルの経験割合は、小学生低学年や高学年、中学生に比べて大きいことも確認できました。未就学児の場合、毛染めや体毛の体毛処理などによる装い身体トラブルの経験割合は3割を超えます。

 読者の皆さんは、これらの値をどのように思われるでしょうか。人によってとらえ方は異なるかもしれませんが、注意する必要があると考えられます。というのも、次ページで説明するように、低年齢での身体のトラブルの経験は影響が大きくなることが多いからです。

注5 東京都生活文化局 化粧品類の安全性等に関する調査結果【概要】抜粋(2007年)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/anzen/test/documents/kesyouhinn.pdf
注6 鈴木公啓「子どものおしゃれの低年齢化 未就学児から高校生におけるおしゃれの実態」(『慶應義塾大学日吉紀要 言語・文化・コミュニケーション』、50、53-69頁、2018年)