音楽業界に変化をもたらした
「本物の天才」
新たな真正性の表現と、自立したヒロインたちの描写を持つ『14番目の月』は、女性クリエイターの流入によってポピュラー音楽、歌詞、制作における女性の役割がいっそう多様化していったという、この幅広い潮流の表れであった。
ユーミンや他の女性シンガー・ソングライターたちが自身の創造性を強調するにつれ、それらの個性はメディアにおける広範な変化に寄与し、ユーミンの作品は女性メディアと主流なメディアの中道に位置付けられることとなった。

この点において、ユーミンは音楽業界におけるリベラル・フェミニズムの動向を体現していた。おそらくこれらの側面があったからこそ、ユーミンは自身の1970年代の作品を「密室のウーマンリブ」と称したのではないだろうか。
「翔んでる女」(現在、この表現は使われていないが)というイメージは、『14番目の月』以降の数十年にわたって、ユーミンのイメージと結びついてきた。
2019年の暮れに、週刊誌『週刊現代』が「地頭力・努力力・感知力・実行力」を基準として日本の「本物の天才」ランキングを発表したとき、ユーミンと中島みゆきはそのトップ10に名を連ねた唯一の女性たちであった。
この結果は、女性シンガー・ソングライターの文化的な影響力が現在まで続いていること、そして彼女たちが事例として重要であることを明らかにしている。