定年前から意識したい、認知症リスクを下げる生活習慣

 また、犬を飼っているご家庭では、散歩の時間を通じて地域の人とあいさつを交わすなど、日常のなかで小さなつながりが生まれやすい環境にあります。私自身も毎日のようにドッグランに行くのですが、そこには20人ほど人が集まっていて、よく会話が生まれるんです。「どこから来たんですか?」といったやり取りから、自然と親しくなっていくんですね。

 お子さんがいるご家庭であれば、学校行事や子育てを通じた交流も、人間関係を無理なく広げていく良いきっかけになります。そのほかにも、近所のジムに通って顔見知りをつくるだけでも、十分に社会的なつながりの一つになると考えています。

――できることは多そうですね。ちなみに、退職金を使ってカフェを開業したり、蕎麦打ちを始めたりするという話もよく耳にしますが、こうした取り組みは認知症予防につながるのでしょうか。

 それが厳密に認知症予防につながるかどうかはなんとも言えませんが、夢中になれることがあって、それが人間関係や人生の豊かさにつながっていくのであれば良いですし、そこでできた人間関係は、認知症予防にも一役買ってくれるのかもしれません。

――他にも、認知症にならないために定年前からできることはありますか?

 そうですね。将来を見据えて、定年前から意識しておきたいのは、やはり「運動」です。定年後には仕事の時間が減り、その分、自由に使える時間が増えてきます。その時間を運動にあてる習慣を、ぜひ前もってつくっておいてほしいですね。

 あとは、食べ過ぎや飲み過ぎといった「過剰」を避けることも重要です。

――暴飲暴食が体に悪いというのは想像がつきますが、それが認知症リスクにもつながるのですね。

 おっしゃる通りです。たとえば、喫煙や過度の飲酒、カロリー摂取過多による肥満、そして塩分の摂りすぎが招く高血圧。これらはいずれも、認知症のリスクを高める要因とされています。

 一方で、認知症になりにくい方々の生活を見てみると、こうした“過剰な習慣”を持っていない傾向があるのも事実です。