「やろうと決めたことがあるのに、すぐにダラけてしまう」――そんな自分にもどかしさを感じ、ストレスを抱えていませんか?
勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばししてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』です。著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。本稿では、本書より一部を抜粋し、「だらだらスマホをやめるコツ」を紹介する。

【納得】だらだらスマホを一発でやめる心理学的なすごい方法Photo: Adobe Stock

誘惑を視界の外へ遠ざける

 誘惑に負けない心理的作戦として、まず挙げられるのが、「誘惑を排除する」です。

 何を当たり前のことを言っているのだと思うかもしれませんが、誘惑に打ち勝つには、その原因となっているものを遠ざける、あるいは遮断することが、もっとも効果的な方法になります。

 私たちは、常に環境の影響を受け、多くの行動を自覚なしに生じさせています。

 周りに誘惑的な刺激が存在していれば、当然ですが、それが目に入ってくることで、自分でも気づかないうちに、「望ましくない目標(誘惑)」が活性化されることになります。

 スマホが誘惑となっている人は、スマホの電源を切って、机の引き出しの中にでもしまっておきましょう。

 ゲームが誘惑となっている人は、ゲームが終わったら決まった位置に片付けて、勉強や仕事をしている時は、ゲームが目に入ってこないようにしましょう。

 漫画が誘惑となっている人は、漫画は本棚の後ろの列に置き、手前の列にはそれ以外の本を並べましょう。

 禁煙や禁酒、ダイエットをしている人は、誘惑となる対象(すなわち、タバコ、お酒、スイーツ)を家に置かないことが望まれます。

 ついついクレジットカードで買い物をしてしまい、毎月、恐ろしい額の請求がくる人は、クレジットカードをもたないようにしましょう。

 誘惑となる対象を遠ざけるという原始的な方法が、実は抜群の効果をもつのです。

禁煙を続ける自信がある人ほど、禁煙に失敗する

 まちがっても、「こういった誘惑があっても、私なら大丈夫」と思わないでください。

 多くの人は、自分の自制心を過大評価していることがわかっています。自分の自制心で誘惑に打ち勝てると思っているのです。

 心理学のある研究では、禁煙を続ける自信がある人ほど、誘惑を避けようとせず、自分の自制心に頼ろうとする傾向があることが示されています。

 その結果、どうなると思いますか?

 もう、みなさんならおわかりだと思います。禁煙を続けることに自信があった人ほど、禁煙に失敗することになりました。

 逆に、禁煙を続けることに自信がない人は、できるだけ、タバコが吸いたくなる状況を避けることによって、禁煙を続けられていたのです。

 自分の自制心の強さを過大評価しないことが大切です。

 過信することで、誘惑を遠ざけようとする意識が低下してしまいます。

 自ら、誘惑を引き寄せるという愚かな失敗をしないようにしてください(これは、私への戒めでもあります!)。

始める前にやめる

 もう1つ、注意することがあります。

 私たちは、目標に向けての行動を起こす前に、「ちょっとだけ」と思って、誘惑となる対象に触れてしまうことがあります。

 これから頑張るのだから、ちょっとだけならいいだろう……といったあれです。

 仕事を始める前に、ちょっとだけネットサーフィンをしよう、カロリーの高い食事を控えているのだけれど、一口だけポテトチップスを食べようといった具合に。

 ちょっとだけだったら問題ないだろうと考えがちなのですが、実は、この「ちょっとだけ」というのが大きな罠になります。

 いったん動き始めた物体がそのまま動き続けようとする「慣性の法則」と同じように、人間は一度走り始めたことに、ブレーキをかけるのがとても苦手です。

 いったん始めてしまった行動をやめるには、相当の自制心が必要になってきます。ダラダラと誘惑が続くと、そのために使われる意志の力も多くなってしまうからです。

 そして、継続時間が長くなればなるほど、行動はやめにくくなります。

 そこで、「始める前にやめる」ことを意識しましょう。

 ポテトチップスを一口食べて残りを我慢するよりも、全く手をつけないほうがよほど我慢しやすいです。ポテトチップスの袋を開けないのが一番です。

 初めから手を出さないことが、自制心を使わないための効果的な方法になります。

 ぜひ、ここまでの内容を参考にして、あなたにとっての誘惑を排除するやり方について考えてみてください。

※本稿は、『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。